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「エドガー・ドガ」
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エドガー・ドガ
室内を中心に絵画を描き、特に、バレエの踊り子の一瞬の姿を巧みな構成で描き続けた印象派の巨匠が、エドガー・ドガである。ドガは、1836年パリで銀行家の息子として生まれた。経済的に余裕のある家庭で育ったため、バレエの鑑賞を好み、オペラ座の提起会員となっていた。このため、普通の人ではなかなか入ることのできない、バレエの舞台袖や稽古場、楽屋などの風景を描いた作品が数多く残されている。
ドガの絵画の魅力はその卓越したデッサン力
1855年には、エコール・デ・ボサールに入学し、絵画を本格的に勉強する。このとき、尊敬する新古典主義の巨匠、アングルに「線をたくさん描きなさい」と助言された。以来、その教えを守り、デッサンを重視した作品の制作方法を続けたという。実際ドガの絵画の魅力はその卓越したデッサン力に大きく支えられている。このようなデッサン重視の作成方法などから、ドガはその他の印象派が戸外で多く制作していたのと異なり、室内で作品を手がけた。また、自身は印象派に属するととらえられることを好まなかったともいう。人物の日常的な表情を写し取るドガの作品
バレエをテーマにした作品「バレエのレッスン」では、踊り子たちが練習する室内風景を描いている。踊りを踊って練習する踊り子の姿もあれば、それを指導するものの姿、背中に手をまわして掻いているような仕草をする姿、腰を下ろして順番を待っている姿など、様々な踊り子の姿が切り取られている。遠近感をよくあらわした巧みな構成で、人物の日常的な表情を写し取っている。 オペラをテーマとした代表的作品としては、「オーケストラ席の音楽家たち」がある。ドガの父はアマチュアの音楽家であったため、ドガは幼少の頃から音楽に親しんでいたという。画面には、楽器を手にした演奏者の上半身がアップで3人ほど描かれている。黒い衣装に身を包み、背後から垣間見えるその姿はどっしりと落ち着きがある。画面中央から上部に視線を移すと、そこには舞台でお辞儀する踊り子の姿がある。照明で白くぼうっと浮かび上がるその姿は幻想的で、3人の演奏者の姿とコントラストをなしている。 ドガは踊り子を描くことをとても好んでおり、晩年目がほとんど見えなくなってからは、踊り子の彫刻も残している。髪の毛や衣装の細部など大変に細やかで優雅な作品である。優雅なだけでない踊り子の世界の厳しさも受け止め、それを画面に表したドガは、社会における弱者の心をよく受け止めた者だったのかもしれない。