刑部人

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 刑部人は日本の昭和を描き続けた日本人洋画家です。栃木県で生まれ育った刑部人は、幼い頃から教育者である父に教えを乞い、絵画を描き、幼少の頃から芸術に触れる機会を多く得ていました。画家として大成した刑部人の描く作品は,日本各地の風景画が多く各地を旅してはその風景を写実的に描き続けました。
 刑部人の描く風景は、豊潤でありながら繊細で、大地の香りがこの場で感じ取れるような、秀逸な作品ばかりです。その刑部人の雄大さを物語る作品として紹介したいのが1955年に描かれている「渓流錦繍(十和田奥入瀬)」です。紅葉し始めにも見える木々は、まだ若干の色づき程度ですが、まるで爽やかな風が渓流にそよいでいるような、爽やかで哀愁漂う作品です。また、激しくも清く規則正しく流れているであろう水の表現も秀逸です。木々の数々は油彩独特の幻想的なタッチで描かれており、写実的に描かれた渓流とのバランスが素晴らしく、まさに川に音色が聞こえてくるような彼の代表作です。1929年に東京美術学校西洋画科を卒業した刑部人は、その後1946年・1947年で日展において特選を受賞しています。しかし、あの優美で豊潤な風景画に辿り着くまでは刑部人の心の中では、様々な紆余曲折があります。ヨーロッパで発生したキュビズムやフォービズムなどの芸術運動は当時の若い画家達には刺激的でした。とはいえ、自分の作風とのギャップなどに苦しみ抜いた刑部人は、自分の得意とする写実的な絵画へ返り咲くことができます。ペインティングナイフのバネの反動を利用して、生乾きの絵の具を重ねていく独特の絵画方法で、刑部人という画家の名を確立しますが、決して外国の風景画は描きませんでした。バルビゾン派に憧れつつも「奈良や京都など10年以上描き続けても思うようにならぬのに、何故ヨーロッパの風景が描けるのか。」と言い、この信条一心で日本の風景を生涯描き続けたのです。そして、1978年に床に伏す直前まで、鉛筆を握っているかのような素振りをみせていたといいます。刑部人の現世での旅は終わってしまいましたが、今、どこかで愛する日本の風景を描き続けているに違いありません。

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