大樋焼[三代]_勘兵衛

大樋焼[三代]_勘兵衛

勘兵衛

 大樋焼三代は勘兵衛を名乗りました。大樋焼の道統は、七代道忠をもって明治初期に一時廃絶、その後長左衛門を襲名する家が立ち、後に勘兵衛を襲名する家が現れ、ニ家に分かれています。従って、大樋家歴代が代を継ぐと長左衛門を名乗ったのか、勘兵衛を名乗ったのか、本当のところはあいまいですが、大樋焼の歴史の定本とされる七代道忠が編纂した『石川県大樋窯履歴』では、三代、四代五代の三代は勘兵衛を名乗ったといわれています。
 三代勘兵衛は二代長左衛門と並んで残された作品が少ない宗匠です。初代、二代目が作り上げた作風をしっかりと受け継ぎながらも、茶碗の造形に新風を吹き込んだとされています。 三代目の特徴のひとつは、まず初代に見られた荒々しくさえある豪快さを控えめにしたことでしょう。そのせいか、特に初代二代、三代と順番に続けて作品を見ていくと、突然静けさに包まれたような気分になります。その姿勢を指して、楽家への迎合だと非難する人がいたらそれは間違いです。多くの評論家が指摘するように三代勘兵衛の作には技巧も加わり、茶陶の味わいが増しています。しかし、それは楽家が持つ茶味とは異なり、初代が築いた素朴さのうえに成り立つものなのです。
 例えば三代で有名な平茶碗を見ると、表面の釉調や肌の景色に大樋焼らしさがありありと見られますが、全体としては静けさにあふれ、茶陶らしさを湛えています。しかし、腰の立ち上がりに楽家では見られない緊張感がみなぎります。これを指して「カリッとした」作行きと評しますが、けだし言いえて妙でしょう。平茶碗も大樋では珍しいですが、同じく珍しい筒茶碗もいくつか残しており、その独特な作風を良く表しています。また、細かい櫛目を好んでいたようで、「寿」の銘を持つ飴釉撫肩茶入、角取りをした四方水指が、櫛目の美しい作品として伝来しています。角取りの四方水指は、奇を衒ったところのない、自然な造形の美しさを持っており、三代勘兵衛の持つ造形の才能を感じさせます。

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