岡鹿之助(おかしかのすけ)

 岡鹿之助は、東京都麻布西町(現在の港区元赤坂2丁目)に、劇評家として名高い岡鬼太郎の長男として生まれました。1919年東京美術学校西洋学科に入学し、卒業後、勉強のためにフランスに渡ります。留学先のフランスで、自らの油彩画の理解が足りないことを痛感することになります。留学した翌年、サロン・ドートンヌ(近代美術史上に大きな功績を残したフランスの美術展覧会)に初出品し、見事入選を果たすのですが、その展覧会場で自らの作品のマティエール(素材の選択、用法によって創り出した肌合いのこと)に関する欠陥を自覚します。このことをきっかけにして、顔料、キャンバスについて基礎的な学習に取り組み、独自の「点描技法」による制作を開始します。これは新印象派の方法と違って、筆跡がキャンバス上で見えないように「ぼかす」工夫をし、色の明暗のバランスを取りつつ、褐色に統一された色あいをキャンバス上で模索したものです。日本からヨーロッパに渡った作家の多くが、筆跡を強調させた表現に傾倒するなかで、日本人が苦手とされる知的分析に基づく画面構成を目指した岡は、非常に稀有な画家なのです。 当初3年のフランス滞在のつもりが結果的に約15年もの長きに渡って滞在し、油彩画のマティエールを研究しました。1939年(昭和14)に帰国し、翌年春陽会会員となり、静謐で詩情に溢れた絵画作品を発表し続けました。

秩序のある静謐な世界観を目指す

岡は、素朴さや上品さを体現し、抒情的表現を追求した「遊蝶花」や「雪の発電所」によって、戦後、純粋な造形言語を確立した画家の一人として高い評価を得ています。「油絵のマティエール」や「フランスの画家たち」といった書籍によって文章家としても知られ、1964年に日本芸術院賞を受賞。1968年同会会員となり、文化勲章を受章しました。現在、岡の作品は目黒区美術館、ブリジストン美術館(東京都中央区京橋)などで鑑賞することができます。秩序のある静謐な世界観を目指し、澄んだ色彩から放たれる詩情をキャンバスに落とし込んだ岡鹿之助。20世紀の偉大な日本画日本画家のひとりだといっても過言ではないでしょう。

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