掛軸 近藤浩一路

近藤浩一路 舟上の牛

漫画や挿絵も描いた水墨掛軸画家、近藤浩一路。日本的な情景を、水墨画で描いたモノクロの感覚が新鮮です。彼の絵を見ていると、不思議な感覚がします。それは、日本的なインスピレーションです。外国にはない、日本人の持っている何かが、彼の絵を際立たせ、淡い感覚を植えつけられます。それはなかなか味わったことのない感覚で、一言で述べられるようなものではありません。漫画記者だったという異色の経歴を持つ彼ですが、違和感のようなものは感じさせません。感じるといえば物事や人物、風景に対する暖かさでしょうか。日本を代表する、独自の作風を持った水墨画家であり漫画家なのです。裕福な家に生まれ、医師になることを望まれましたが文芸活動に傾倒、今度は画家を夢見て東京美術学校西洋画家へ入学しました。白馬会へも入会。外光派の影響を受けました。水墨画もはじめ、一方で文芸活動にも精を出しました。1年留年して卒業し、読売新聞社に入ると漫画記者になりました。大正12年に第10回院展に出展した「鵜飼六題」が代表作といわれています。これは、鵜飼をする人間の準備段階から終わりまでを描いた連作です。水墨画家らしい深い濃淡で人々や船、鵜たちの様子を描いています。こういったものを題材に取り扱うのは、漫画記者だったころに覚えた人間や事物への愛情ではなかったでしょうか。とにかく光と影の使い方が抜群で、独自の境地に達していると誰もが感じることでしょう。海外に旅行したり、ゴヤ、エル・グレコなどの作品をこよなく愛したりしながらも、彼は独自の水墨画を描いていきました。日本の風景を描いたものが多く、愛情にあふれています。山村や、海を描いたものも多く見られます。もともと漫画記者だった彼は、記者という職業の仲で、人々の営み、それを取り巻く自然、厳しい労働、家々、そういったものに関心が生まれたのではないでしょうか。そうして、深い愛情の元に、それらの真実を追いかけて行ったのではないでしょうか。それをヨーロッパ風の描き方でなく、日本風の、東洋風の描き方で描こうとしたのではないでしょうか。しかしこのことは、本人にしか分かりません。

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