日本画 大矢紀

日本画買取・大矢 紀(おおや のり)は1936年(昭和11年)に新潟県の三島郡(長岡市に接する海岸部の町)に生まれた日本画家である。前田青邨(大和絵を得意とした日本画家)に師事し、同門の兄弟子である平山郁夫の影響を強く受けた。平山郁夫がシルクロードをテーマに書き続けたように、大矢 紀は北国の山々を中心に描き続けている。1955年に院展で初入選を果たして以来、文部科学大臣賞をはじめ数々の賞をものにしてきた。今の日本画壇における最高峰の画家といって過言ではない。 「故郷新潟の厳しい自然の中で育まれた感性によるものと思っている」と彼自身が語っているように、冬には波の華が飛びすさぶ日本海を背に、遠く見渡せば駒ケ岳を中心に雪の連山があり、少年時代の多感な心に深く刻み込まれた印象が彼独特の作風となって現れている。彼自身の言葉を借りれば「生命の胎動」をテーマに雪山や火山など壮大な自然、山岳風景に心魅かれて作品を発表してきたものである。

「生命の胎動」を現した代表作「北の胎動」

2002年の再興第87回院展に出品し、その後地元の長岡市の施設に寄贈された作品「北の胎動」を見てみよう。これは北海道の有珠山が2000年に噴火した時に偶然に居合わせてスケッチした時の風景である。500号という横長の大画面には白一色の雪に覆われた有珠山が画面いっぱいに描かれている。その時の心境を彼自身が語っているので紹介しておこう。「スケッチしている際、足元が熱くあちこちで噴煙立ちのぼり大音響と大きな岩が崩れ、早く逃げたいと云う気持ちと、こんなチャンスめったにないと云う心の叫びがないまぜになった作品」とある。まさに「生命の胎動」を現した代表作である。 亡き平山郁夫を偲んで描いたという「妙見天空」は雪をかぶった妙高山を遠くに凛と描き出し、画面手前の枯れ木の柔らかな色合いとの対比で山頂部分が光り輝いて見える。その頂の奥に垣間見える三日月の上には青くボンヤリと輝いている星が置かれている。タイトルの「妙見」は北斗七星を神格化した呼び名であるが、兄として師としても尊敬していた平山郁夫を偲んでのことに他なるまい。

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