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日本画 田渕俊夫

     田渕俊夫 『明日香栢森』

田渕俊夫(たぶち としお)は1941年(昭和16年)に東京都江戸川区小岩に生まれた日本画家で、現在の日本画壇を代表する現在活躍中の画家である。 昭和40年3月東京藝術大学美術学部日本画科を卒業し、引き続き大学院に進級した。 その後は東京藝術大学で副学長まで務めあげ、愛知県立芸術大学などでも教鞭をふるった。 「画業40年 東京藝術大学退任記念」と題した日本橋三越の回顧展での、挨拶のパネルに書かれた言葉を紹介しておこう。 「藝大日本画科に1年浪人し、ビリから2番で入学した。そして在学中は展覧会に応募しても落選を繰りかえした」と真っ正直に学生時代を振り返っているが、卒業時に描いた「水」が大学買い上げとなって初めて世に認められた。 田淵の画の特徴のひとつは、線描の繊細で艶やかな筆使いにあるが、これはスケッチを繰り返して艱難努力した結晶であり、在学中の苦学を偲ばせる。 1976年に描いた「明日香栢森」が白黒の城にかかる新緑の木立を見事な描線で描いていて、若い頃の代表作となっている。 しかし明るい色使いの作風から、やがて墨一色の作品を描き始めるようになる。 その心境を、「色彩を使うと絵が重くなるが、墨では虚像的なリアル感が出てくる」と自ら語っている。 「永平寺の襖絵24面」がその変化を示す代表作で、片面を雲水とし、雨雲が川をなしやがて霧となって立ち上っていく生々流転の姿を力強く描いていて見事である。 最近作の「惶Ⅰ」と「惶Ⅱ」も作風の変化を証明する作品で、おどろおどろしい稲妻や竜巻を墨一色の強烈なタッチで描いた長さ10mの大作である。 これは2011年3月11日の東日本大震災の惨状に触発されて描かれた作品であるという。 「惶」という難しい漢字は「おそれ」の意味をあらわしていて、「自然に対する畏敬」の念を示している。 ⅠとⅡに描き分けたのは「天災から平穏へ」、すなわち「鎮魂と再生への希い」を表現しようとしたからではないだろうか。 ちなみに「惶Ⅱ」の右方には一本の若樹が描かれていて、再生への田淵本人の切なる祈りが込められているようである。

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