楽焼[三代]_道入

楽焼[三代]_道入

 三代道入は別名「ノンコウ」の名でも知られています。この名は、千家三代目・千宗旦が伊勢参宮の折に立ち寄った立場茶屋の主人・道心坊能古の名に因むと言われています。宗旦はこの茶屋の近くで竹を見つけ、二重切花入を作り、これに「ノンコウ」と命銘、道入に与えます。道入はこれを大変気に入り、毎日花を生けて飾ったそうで、これによりノンコウの名で呼ばれるようになったとか。
 ノンコウは後に本阿弥光悦により「楽の妙手なり」と称えられ、現代でもなお、随一の名工とされています。その功績は多々あり、まず窯の工夫により焼成温度が高くなったこと、そして多くの釉薬の工夫が挙げられます。この二点は釉薬による景色の変化を多彩にし、釉薬がよく溶け厚くなり、美しい光沢を放つようになります。また、釉薬の工夫では、腰より上に厚く黒釉を塗り、焼成中に解けた釉薬が幕のように垂れ下がる「幕釉」の技法を編み出しています。こうした釉薬の工夫もあってか、ノンコウの作には、色合いや装飾が華やかな傾向があります。赤でも明るい軽やかな茶碗、黄土がけをしたささやかな飾り。今までにないこうした茶碗の境地はノンコウに始まったものです。作風は、薄造りながら大ぶりでのびやかと評されます。口縁は「蛤端」と呼ばれる造りを好みます。これは貝が合った先端のように先が細くなるつくりのことで、口当たりがよくなります。また、ここを波打たせるような形にする「五岳」「五峰」と呼ばれる形状もノンコウに始まるとされています。見込みの茶溜りが大きいのも道入の特長でしょう。
 有名な作品に「ノンコウ七種(黒四種、赤三種)」などがあります。本阿弥光悦は先述の通り「楽の妙手」とノンコウを称えましたが、250年ほど下った北大路魯山人が「ノンコウは長次郎に比して強さ、豊かさにおいて格段に劣る」と評しています。道具の好みは時代や人によって大きく変わるものだという良い例と言えるかもしれません。

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