田辺至(たなべ いたつ)

田辺至は明治から昭和にかけて活躍した洋画家です。1927年に芸術院賞を受賞した、裸体は彼の代表作の1つです。上品でありながらも迫力のある油彩画は、写実的でもあり、そしてどこか抽象的な趣もあります。裸体を始めとした人物画はもちろん、風景画でも多くの傑作を残しています。エッチングや版画にも造形が深く、その活動は絵画のみにとどまりません。 32歳の若さで東京美術学校助教授の地井を得たエピソードなどは、彼の才能の高さを如実に照明しているものと言えるでしょう。助教授となったのと同年の大正8年に、文部省在外研究員として西欧に遊学しています。この時触れた西洋の芸術世界の空気に触発して作成されたのが、裸婦です。昭和に入ると東京美術学校教授 官展での審査員を務める傍ら、自らも多くの作品を発表し続けました。

観るものを穏やかにしてくれる、優しい作風

田辺至は趣味として、音楽鑑賞がありました。 クラシック音楽がルーツとなっている、彼のインスピレーション。それは、彼の芸術作品に大きな影響を与えています。決して奇をてらうことのない、様式美に沿った作風でありながらも、彼の絵からは独特の温雅さを感じるものです。 これは彼の音楽趣味に由来するものだと言われています。芸術学校の教授を強め、自ら白潮会を創設するなど、芸術に関わる社会的な経験も豊富です。美術界で確固たる地位を得た後も、精力的に作品を作り続けました。そんな彼の作品は、図画 図画新撰といった著書に詳しいです。経歴を見ても非常に順風な人生を歩んだ事が解ります。そんな田辺至の絵画からは、切迫感や恐怖といった負の感情や緊張感は受けません。むしろ観るものを穏やかにしてくれる、優しい作風が彼の作風なのです。 1916年の作品である油彩画・畑。 畑の傍らにあるあぜ道をモチーフとしているこの作品。 比較的荒いタッチで描かれていながらも、草木が風になびく様子が描写されております。 その場面の様子が写実的に描かれているものの、どこか幻想的な雰囲気も同時に備えています。 このように、田辺至の作品には、モチーフこそ決して珍しいものでは無いものの、それを全く別の世界のものとしてキャンパスに落としこむ事を非常に得意としている画家と言えるでしょう。

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