[茶碗師] 樂吉左衛門

 茶道具作家、楽吉左衛門。千利休に始まる茶の道統、それはすなわち「草庵の茶」と言ってもよいでしょう。そしてその草庵に欠かせないのが、楽家による楽茶碗です。楽家の初期の歴史には不明な点も多いのですが、初代長次郎は、中国・明出身の瓦焼職人を父に持ち、瓦焼に勤しんでいましたが、利休に見出されて茶碗を焼くようになったと伝えられています。

枯れた侘びさびを体現しながらも、非常に簡素で力強い

 楽焼の始まりは、草庵の茶にふさわしい侘びた茶碗を焼くことから始まりました。かつて闘茶などで隆盛を極めた東山文化に代表されるような大名物ではなく、誰でも手に入れられる国焼であることが求められたのです。従って、その姿は枯れた侘びさびを体現しながらも、非常に簡素で力強いものでした。
 製法上の特徴は、轆轤を使わず手でこねあげる「手捏ね(てづくね)」という技法で成形し、箆で掻き落として整えることです。楽家代々によって箆の使い方に特徴があり、掻き落とすだけでなくその箆目で景色を楽しむものもあります。色には大別して黒茶碗と赤茶碗の二種があり、黒茶碗は、鉄釉を重ねて塗ることで仕上げ、赤茶碗は、楽家の名前の由来となった聚楽土のような黄褐色または赤色の土から焼き上げるものです。釉薬は代々工夫が重ねられ、幕釉(まくぐすり)、朱釉、カセ釉などが独特のものとして知られています。 また、他の焼物と異なるのは、焼き上げた後、高温の状態から一気に冷却することです。釉薬が固まり行く状態を見ながら、長柄のやっとこでつかみ、水に付けて冷やします。楽焼の独特の窯変や焼の風情はこの焼き方によるところが大きいといわれます。また、やっとこのはさみ跡も楽焼ならではのものと言えるでしょう。
 楽家は初代長次郎から当代まで数えること十五代。代々世襲するまでは「惣吉」を名乗り、代を襲うと「吉左衛門」を名乗ります。そして隠居して代を譲ると、「入」を通字とする道号で名乗るのです。また、楽家から身内や弟子が同系の窯元を立ち上げており、それらは楽本家の本窯に対して脇窯と呼ばれます。

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