裏千家[十六代]_玄黙宗室_坐忘斎

 2002年に宗匠を継いだ千宗室は、価値観が多様化する現代に即してか、多様な活動を続ける茶人です。音楽などに興味を持つ一方で、特に文筆業に力を入れており、代継ぎ以前から随筆などを発表、宗匠になってからはますます盛んに著作を著しています。
 自作・好み物に関しては、当代になって間もないころ開催された「坐忘斎 千宗室 自作・好み物展」で多く発表されています。この時、襲名からわずか半年余りにも関わらず50点を超える自作物と好み物を発表しており、その種類も豊富で制作意欲の高さを感じさせます。特に自作では利休形や古流をよく表し、風格を感じさせる品が多くあります。しかし、宗匠の心意気をもっとも反映しているのは「丹頂」の銘を持つ竹一重切花入かもしれません。これは、節が片側に向かって開いており、あたかも花入自体が大きく曲がっているように見えるというものです。真っ直ぐなのに曲がって見えるという、奇妙で軽妙な面白さがそこにはあります。
 また、こうした面白みは自作の茶杓でも同様に発揮されています。胡麻竹を使って竹の景色を楽しむ作品は歴代宗匠にもいましたが、非常にアンバランスに煤の入った竹を使って独特の景色を生み出した宗匠は当代が初めてかもしれません。

日本独自の非対称の美の感覚

 これらに共通しているのは、日本独自の非対称の美の感覚と言えるでしょう。優れて日本的であるという意味で、海外への普及にも努める現宗匠の作品としてふさわしいものとも言えます。また、好み物の花入でも同じ趣旨の作品が作られています。現時点で、写し物は非常に少ないのですが、現代に即した立礼用の棚をはじめ、棚に多く写しが出ており、そのどれもが枯淡としており、古流とも違った趣に味わいを感じさせます。
 また、作品展では禅の言葉にある「漁夫生涯竹一竿」を書いた一幅を示し、「これが今の心情である」と語ったそうです。これは必要なものはごくわずかで、生きるにはそれで足りるという意味です。宗匠としての活動時間はまだ短いものの、坐忘斎好みをよく表している言葉と言えるかもしれません。

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