[一閑張細工師] 飛来一閑(ひきいっかん)

 一閑張(いっかんばり)細工師の飛来家当主が代々襲名している名前。飛来家は千家十職の家系で歴代一閑張による棗(なつめ) や香合などの茶道具を納めてきた。
 当代は1998年に襲名した16代で女性。飛来家の祖は亡命明人である。中国杭州西湖畔の飛来峰(石仏で有名)に生まれた初代は、臨済宗寺院・雲隠寺に入ったが、清の侵攻により寛永年間(1624~44)日本に亡命。同じ臨済宗の寺である京都・大徳寺の僧、清巌宗渭を頼った。京都の小川頭(現上京区)に住み、素性を隠して「飛来」姓を名乗った。これは故郷「飛来峰」に由来すると言われ、「ひき」は「ひらい」ともいう。趣味で木地や張子などの器を作って茶を楽しんでいたが、清巌の紹介により千宗旦に入門、趣味の紙漆細工を宗旦に認められ、棗や香合などの小物の注文を受けるようになった。宗旦は形が自在なうえ、軽くて強度があるその細工の実用性と、味わいを好んだという。

一閑張はいずれも紙の風合を生かした塗物

 その後、初代のもたらした紙漆細工は「一閑張」と呼ばれ、高い評価を受けるようになった。宗旦の注文により作成した一閑張の作品は二十例ほど現存している。飛来家四代目になると表千家六代・覚々斎に引き立てられ、正式に御用細工師となった。初代の長女ゆきも父から教わった一閑張を受け継いだ。御所仕えをしていた岸田喜右衛門に嫁いで岸田ゆきとなり、その一門も漆細工を家業とした。岸家の一閑張は「岸一閑」と呼ばれる。
 一閑張とは漆工芸品の一種で、木地に粘着力の強い蕨糊(わらびのり)で和紙を張ったものを素地として、上に漆を塗って仕上げたもの。あるいは木型に和紙を張り重ね、型から抜き取った張抜(=張子)に漆を塗ったもの。いずれも紙の風合を生かした塗物のことである。特有の光沢があり、軽く強いのが特徴。木型の形しだいで自由に形を作ることができ、応用がきくため、ひろく広まった。漆の塗り方は、和紙を張った木地に摺漆(すりうるし)を2~3回行い、それから中塗・上塗を施すものを「一閑塗」といい、摺漆だけを4~5回繰り返し行うものを「摺仕上げ一閑」という。木地に張った紙肌の現れ方に違いがでる。

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