[指物師] 駒沢利斎(こまざわりさい)

 千家十職のひとつ、指物(さしもの)で茶道具 を作る名匠の家である。茶道具 の指物といっても、棗、香合、建水、菓子器、棚、香合、炉縁など種類は多彩で、指物師の範囲はかなり広い。指物とは、釘を使わず木だけを組み合わせて作る木工品で、指物の「指す」は「差す」ともいい、物差しで板の寸法を測るところにもその名の由来があるようだ。
 京指物の歴史は古く平安時代にまでさかのぼり、かつて都の貴族に愛された気品のある繊細なデザインが特徴である。駒沢家は江戸時代、延宝年間(1670年代)に初代宗源が京都で指物家業をおこした。事実上茶道に関わることになったのは二代目宗慶になってからで、利休の孫、千宗旦の注文で指物を製作したのが縁となった。「利斎」を名乗るようになったのは四代目。表千家六世の覚々斎と親交を深め、その技量を高く評価されて茶方指物師として任を受け、同時に「利斎」の名を与えられた。それ以降、当主は利斎を名乗る。七代目利斎は塗師としても非凡な才能を発揮した。

簡素でありながら研ぎ澄まされた精神

 茶道の指物は、簡素でありながら研ぎ澄まされた精神をその完璧な精度に託している。素材の持ち味を生かした木地仕上げが基本で、代表的素材は桐である。
桐は水分を防ぎ、熱にも強い。四季の変化がある日本では入れ物に適した材であり、耐久性も十分。少なくとも三代100年は持つという。桐は桑などと同様軟木で、その中でも最も軽く柔らかい性質をもつ。それゆえごまかせない材である。精緻な面取りや曲線は細心の技巧が要求され、寸分たがわない精密さが作品に結実する。優れた意匠、美しい木肌と木目。連綿と受け継がれる職方の業(わざ)は時代を経ても続くかに思われた。
 だが、十職の家門の中でも駒沢家は歴代において当主や親族が短命で、ことに明治以降は大成する前に早世する当主が続き、常に後継者問題に悩まされている。残念ながら現在では、14代目が1977年に没したあと、以来30年余り、当主は空席の状態になっているが、近親者が修行中で新たな息吹を吹き込まれる日が待たれている。

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