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石井柏亭

石井柏亭 ナポリ港

 石井柏亭は明治生まれの洋画家です。日本画洋画、また批評家など幅広く美術に関わっていた日本を代表する人物の一人です。石井柏亭の本名は満吉なのですが、この号を使い始めたのは何と弱冠10歳の頃からだと言いますので驚きです。その当時に発表した「八郎弓勢之図」を皮切りに画家としての実力を発揮しだし、12歳の頃に描いた「長年尽忠図」は宮内庁お買い上げという、並の才能ではない経歴をもっているのも特徴です。元々、父や祖父が日本画家ということもあり、芸術家としてのサラブレットの血筋は受け継いでいたのかもしれません。石井柏亭の代表作は数多くありますが、その中でもより功名なタッチとリアリズムを追求した結果、描かれているのが「ジプシーの娘」ではないでしょうか。斜からこちらを覗く眼差しが何とも切なげであり、官能的でもあり、見る者全てをその世界観に引きずり込みます。また、同系色でまとめられた全体の色彩感覚も、未だ色褪せるこのないモダンな色使いで石井柏亭のセンスの良さを伺い知ることができます。
 石井柏亭は誕生から6年後の1897年に浅井忠浅井忠に弟子入りしています。日本でも指折りの実力と、最先端を常に見据える先見の明を持つ浅井忠を師にもつ石井柏亭は、後世に数々の名品を残します。浅井の精神を受け継ぐ印象を受けながらも、模倣では全く石井柏亭としてのオリジナルな作品ばかりなのです。洋画家としても有名な石井柏亭なのですが、始めは日本画を学んでいました。後に父が勤めていた大蔵省印刷局に見習い生として入ったことで、彫刻や素描などの制作を経て水彩画、洋画へと目覚めていきます。また、絵画の世界だけに収まらない石井柏亭は明治35年に、与謝野鉄幹晶子の「明星」で、挿絵も書き出しています。自身も批評などの執筆も担当し、美術界全体を見据えた、行動力と才能に満ちた活動を行っていました。ヨーロッパに外遊した際に観たと思われる「サン・ミシェル橋」や「ナポリ港」など、海外の風景画も数多く残しました。幅広く絵画法を取得している石井柏亭だけに、油絵で描かれたものも水彩で描かれたものもどこか洗練された印象を受け、類稀なるセンスは師である浅井忠の影響もあるのでしょう。美術史や評伝「浅井忠」も執筆していた石井柏亭は、文学と美術に愛された、素晴らしい人生を過ごした日本人の一人なのです。

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