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楽焼[十一代]_慶入

楽焼[十一代]_慶入

 近世の名工と呼ばれる楽家十一代の慶入。吉左衛門としての製作年数も長く、多作であったため、伝世している作が非常に多い宗匠です。
 時代は江戸時代から明治時代へと移り変わる激動の時でした。維新と文明開化の流れの中で茶道は軽んじられ、疎んじられ、特に徳川家と縁のあった千家への風当たりは強く、それは楽家も同様であったでしょう。そんな中、慶入はそうした世事にとらわれることなく、作行きにもそうした萎縮は見られず、実にゆったりとしたおおらかな作品を残しています。
 伝わるところによると三代道入、ノンコウを敬慕したとあり、その作風には、大振りの作行き、緩やかで雄渾な五岳などノンコウを思わせるものが確かにあります。しかし、ノンコウ以降の歴代が研鑽してきた箆使いや色の工夫が凝集されており、ノンコウに囚われない、自由で多彩な作品を作り出しました。また、学識が豊かで詩情豊かな表情を多く描き出しています。黒茶碗は光沢が艶やかで、幕釉だけでなく、縦に塗分けて景色を楽しむような作品を生み出しました。対して赤茶碗は実に冷静で冴え冴えとしていると、もっぱらの評価です。 また、茶碗以外の道具類を非常に多く扱ったことでもよく知られています。香合、水指、振出など目に付きますが、写し物も多いです。
 茶の湯全体が低迷する中、さまざまな道具を作り、華族に売ることで生計を立てたとも言われていますので、これらはそのためのものだったのかもしれません。印もさまざまなものを使っていて、制作年代によって蜘蛛の巣判(大綱印)、董其昌判、白楽印の三種。西本願寺で行われた御庭焼では「雲亭」の号を授かり、明治17年に行った二代常慶の二百五十回忌には「天下一」の印を使用しています。 董其昌判とは、中国明代の書家、董其昌の文字から取ったとされており、その一事をもってしても、その学識の深さが分かるでしょう。老いて尚ますます盛んに作品を作りましたが、晩年の作にあっても溌剌としており、目を見張るものがあります。

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