掛け軸の種類とは?選び方と買取のポイント
掛け軸は日本の伝統的な美術品で、室内に優雅な和の雰囲気をもたらしてくれるもの。これから掛け軸を購入したいなと思っている方も多いかもしれません。また、実家に眠っている掛け軸や祖父母から受け継いだものを見て、「これって価値があるのかな?」「売れるなら売りたいな」と考えている方もいるのではないでしょうか。
実は掛け軸にはたくさんの種類があり、それぞれ異なる魅力と価値があります。そこでこの記事では、掛け軸の種類や選び方、買取のポイントについて解説します。
掛け軸の種類は?

掛け軸と一口に言っても、実はその種類はさまざまです。ここでは代表的なものを紹介します。
仏画の掛け軸
仏画の掛け軸は、仏様を祀るために用いられる特別な掛け軸です。寺院の本堂や家庭の仏間に飾られ、信仰の対象として崇められています。仏像や菩薩の姿が繊細な筆使いで描かれているのが特徴で、観音菩薩や阿弥陀如来・釈迦如来など、特定の仏様が描かれたものも多く存在します。
中国の掛け軸
中国の掛け軸とは、中国の画家や書家によって作成されたものです。その歴史は長く、日本の掛け軸にも大きな影響を与えています。墨の濃淡で描かれる山水画や四季折々の花鳥画・力強い書などが特徴です。
季節の掛け軸
日本では、昔から、四季に合わせて床の間に季節感ある絵柄の掛け軸を飾る文化があります。春には桜や梅の花、夏には涼しげな流水や花火、秋には紅葉や稲穂、冬には雪景色や松竹梅などが描かれています。こうした季節の移ろいを表現した掛け軸を飾ることで、室内でも四季折々の美しさを感じることができます。
縁起物の掛け軸
縁起物の掛け軸は、福を呼び込み、邪気を払うために飾られるものです。招き猫や七福神・鶴亀など、幸福や長寿・繁栄を象徴するモチーフが描かれており、家内安全や商売繁盛を祈願する意味が込められています。一年を通じて飾られることが多く、家庭や店舗の守り神として人気です。
彩色山水の掛け軸
彩色山水の掛け軸は、色彩を使って山や川・海などの風景を描いたものです。墨一色で表現される水墨画とは異なり、四季折々の自然の美しさを豊かな色使いで表現しているのが特徴です。特に、山々の紅葉や川辺の桜・海の波しぶきなど、自然の生命力を感じさせる描写が魅力です。
書の掛け軸
書の掛け軸は、禅の教えや人生の格言、祝福の言葉などが筆で書かれたものです。書家によって書かれた文字には単なる文字以上の深い意味が込められていて、床の間に飾られることで室内の空気を引き締めたり落ち着きを与えてくれたりします。
寿ぎの掛軸
寿ぎの掛け軸は、結婚式や還暦などの特別な祝い事に用いられるものです。「寿」や「福」といった縁起の良い文字が大きく描かれ、祝いの席で飾ると場を一層華やかに彩ってくれます。
節句の掛け軸
節句の掛け軸は、日本の伝統行事に合わせて飾られるものです。例えば、ひな祭りには「女雛男雛の図」、端午の節句には「鯉の滝登りの図」や「鍾馗様」など、行事にちなんだ絵が描かれます。これらの掛け軸を飾ることで、季節の行事をより盛り上げることができます。
掛け軸の部位や形式の種類は?

掛け軸の部位別の種類
掛け軸は、単なる絵や書ではなく、装飾が美しいものはそれ自体が美術品としても評価されます。伝統的な作り方が守られており、各部位には名称と役割があります。
・軸紐
掛け軸の最上部にある紐で、掛け軸を壁や柱に吊るす役割をしています。丈夫な絹や麻で作られることが多く、装飾性も担っています。また、この紐がしっかりしていると、長期間にわたって美しい姿を保つことができます。
・鐶(かん)
軸紐と掛け軸本体をつなぐ金属製の輪です。見えない部分ですが、全体の安定を支える重要な役割を担っています。
・天地(上・下)
「天」と「地」は掛け軸の上下部分を指し、全体のバランスを整えるためのデザイン要素として重要です。それぞれ布や紙で装飾されています。特に「地」の部分は重みを持たせ、掛けた際の安定感を生み出しています。
・本紙
掛け軸の中心部分で、実際に絵画や書が描かれている部分で、掛け軸の命ともいえる存在ですで。絹や和紙が用いられ、その上に繊細な筆使いで描かれた作品が貼られています。
・風帯(ふうたい)
本紙の両側に垂れ下がる細長い布のことを指します。飾られた際の見栄えを良くし、全体の装飾を引き締める役割をしています。
・中回し
本紙の周囲を囲む布の部分です。背景としての役割を持ち、作品そのものを引き立てる役割をしています。色や模様も工夫されており、掛け軸全体の調和を保つのに大切な部位です。
・耳
中回しの両端部分を指します。特に装飾はありませんが、掛け軸を巻いたり広げたりする際に保護する役割をしています。
・一文字
本紙の上部と下部にある細長い布の部分です。上部を「上一文字」、下部を「下一文字」と呼び、作品を引き締める効果があります。金や銀の刺繍が施されているものは、豪華さを演出する役割もあります。
・啄木(たくぼく)
軸の端にある木製の小さな棒です。掛け軸を巻き上げる際に手で持つ部分で、破損を防ぐための役割をしています。
・巻絹
本紙を保護するための薄い布です。掛け軸を巻く際に本紙が擦れないようにし、長期保存にも適した工夫がされています。
・軸棒
掛け軸の最下部に位置する棒で、作品をきれいに巻き上げるための支えとなります。しっかりとした材質で作られており、掛け軸の重心を整える役割も持っています。
・軸先
軸棒の両端に取り付けられた装飾部分です。陶器や木、金属などで作られ、掛け軸全体のデザインを引き立てます。
掛け軸の形式の種類
掛け軸には、いくつかの形式が存在します。代表的なものとして「文人表装」「大和表装」があります。
文人表装
文人表装は、書画を中心にしたシンプルで洗練されたデザインが特徴の形式です。墨絵や書など、余白の美しさを活かした作品に用いられることが多く、落ち着いた雰囲気を演出します。余計な装飾を排し、作品そのものの持つ美しさを最大限に引き立てるため、茶室や書斎など静かな空間で特によく映えます。
大和表装
大和表装は、格式の高い装飾が施された掛け軸の形式です。格式ある場や特別な儀式の際に使われることが多く、日本の伝統を強く感じさせるデザインです。大和表装は、さらに「真(しん)」「行(ぎょう)」「草(そう)」の三つの流れに分かれています。
・真
最も格式が高く、公式な場で使用されます。落ち着いた色調と重厚な装飾が特徴で、厳粛な儀式や仏間にふさわしものです。
・行
真と草の中間に位置するデザインで、日常的な空間にも調和します。適度な装飾があり、家庭での鑑賞や客間での使用に向いています。
・草
自由で伸びやかなデザインが特徴で、現代的なインテリアにも合わせやすいスタイルです。余白の使い方が美しく、軽やかな印象を与えます。
丸表装
丸表装は、全体が丸みを帯びた曲線的な装飾が特徴の形式です。優美で柔らかな印象を与えるため、穏やかな作品や花鳥画・山水画などと相性が良いとされています。
二段表装
二段表装は、作品の上下に異なる布地を用いることで視覚的な区切りを持たせた形式です。重厚感を与える「天地」と作品を引き立てる「本紙」を調和させることで、格調高い印象を生み出します。特に格式のある場や儀式の際に用いられることが多いです。
三段表装
三段表装は、さらに装飾を加えた豪華な形式です。上下に加えて中央にも別の布地を用いることで、より立体的で華やかな見栄えを演出します。結婚式や慶事など、特別な祝い事の場に飾られることが多く、その豪華さが場の雰囲気を一層引き立てます。
掛け軸を選ぶときのポイントは?

行事に合わせて選ぶ場合は?
結婚式や新築祝い・出産祝い・長寿の祝賀会など、人生の節目を祝う場面では「慶事掛け」と呼ばれる掛け軸を選びましょう。
正月のような新年の祝いでは、鶴や七福神といった縁起の良いモチーフが描かれたものがおすすめです。鶴は長寿と平和の象徴であり、七福神は豊かさや幸福を招くとされています。
また、長寿のお祝いでは、鶴亀が描かれた掛け軸が選ばれることが多く、これには長生きと健康を願う意味が込められています。結婚のお祝いには仲の良い夫婦の象徴とされる鴛鴦(おしどり)の図柄、出産祝いには四君子(しくんし)やその年の干支をあしらったものが喜ばれるでしょう。
こうした掛け軸は行事が終われば片付けるのが一般的ですが、その一時だけでも部屋に華やかさと厳かな雰囲気をもたらしてくれます。
インテリアとして普段使いする場合は?
掛け軸は特別な行事だけでなく、普段のインテリアとしても楽しむこともできます。特に、季節を問わず一年中飾っておける「普段掛け」の掛け軸は、室内に和の趣を取り込みたい方におすすめです。
定番のデザインとしては「山水(さんすい)」と呼ばれる風景画があります。山水画には、壮大な山並みや穏やかに流れる川、四季折々の木々など自然モチーフが描かれていて、見る人の心を落ち着かせてくれるでしょう。このほか、座右の銘や名言などが力強く描かれた書の掛け軸も人気です。
季節に合わせて変えたい場合は?
掛け軸を季節ごとに模様替えをすることで、日々の暮らしに季節感を取り入れることができます。このような季節ごとに飾り変える掛け軸は「季節掛け」と呼ばれ、春には桜や梅、夏には花火や流水、秋には紅葉やすすき、冬には雪景色や椿など、その時期を象徴する花や生物・風物などが描かれています。室内に季節感を取り入れたい方におすすめです。
掛け軸の買取を選ぶのポイントは?

掛け軸の購入だけでなく、お家にある掛け軸の売却を検討している方もいるのではないでしょうか。そういったときには、信頼できる買取業者を選ぶことがとても重要です。
掛け軸の買取実績が豊富
掛け軸の価値を正しく判断するためには、専門的な知識だけでなく、数多くの掛け軸を扱った経験が必要です。なぜなら、掛け軸の価値は作者や保存状態、時代背景などによって大きく異なるため、表面的な知識だけでは正確な査定が難しいからです。
信頼できる業者を見極める一つのポイントとして、過去の買取実績を確認することが挙げられます。業者のホームページや口コミなどで、これまでにどのような掛け軸を扱ってきたのか、評価はどうだったのかを調べてみましょう。特に、有名な作家の作品や古い年代の掛け軸を適正な価格で買取っている業者であれば、安心して相談できるはずです。
HPに依頼の流れや料金が明確に記載されている
買取業者を選ぶ際、査定の流れや料金体系が明確に説明されているかも大切なポイントです。業者のホームページを確認した際に、どのような手順で査定が行われるのか、出張査定や宅配査定の有無、そして手数料が発生するかどうかがはっきりと記載されている業者は信頼性が高いと言えます。
例えば、「査定は無料」「出張費はかかりません」など、費用面での不安が解消されている業者なら、安心して依頼できます。逆に、料金が不透明な場合は後から追加の費用を請求されることもあるので注意が必要です。
対応の柔軟性が高い
掛け軸には、先祖代々受け継がれてきたものや、特別な思い出が込められているものも多いでしょう。そうした大切な品を手放す際には、対応の柔軟性が高い業者が安心です。
特に、掛け軸の修理が必要な場合、破れやシミの程度、保存状態に応じた最適な方法を提案してくれる業者であれば安心です。修理の見積もりについても、予算に応じた柔軟な対応が可能であるかを確認しておくと良いでしょう。
Q&Aやアフターフォローがしっかりしている
掛け軸を売却した後で「やっぱり手放すべきではなかった」と後悔することもあるかもしれません。そのため、クーリングオフ制度を導入している業者や、売却後のアフターフォローがしっかりしているかも重要な確認ポイントです。
また、査定時に提示された内容が不明確な場合、後になってトラブルに発展することもあるので、事前に疑問点はすべてクリアにしておきましょう。質問への対応が丁寧な業者は、それだけ顧客との信頼関係を大切にしている証拠です。
鑑定士に状態確認を依頼するのもおすすめ
掛け軸の査定を依頼する場合、専門の鑑定士がいる業者を選ぶのがおすすめです。掛け軸は保存状態や紙質、描かれている技法などによって価値が異なるため、専門的な知識を持った鑑定士がしっかりと確認してくれると安心だからです。
また、シミや汚れがある掛け軸でも、鑑定士が適切な評価をしてくれる場合があります。出張査定が可能な業者も多く、わざわざ持ち込む手間が省ける点も便利です。状態が良ければそのまま買取へ、修復が必要な場合は修理についても相談ができるため、一度相談してみる価値はあるでしょう。
掛け軸高額買取
まとめ
今回ご紹介したように、掛け軸には、仏画や山水画・季節に合わせたデザインなど、さまざまな種類があります。それぞれがそれぞれの魅力を持ち、飾るだけで和の趣を室内に取り入れることができます。掛け軸に興味を持った方は、今回の記事を参考に、ぜひ用途や目的・好みに合ったものを探してみてくださいね。
また、売却予定の掛軸がある方も、まずはその種類や保存状態を確認し、その上で信頼できる買取業者を選ぶようにしましょう。
掛け軸高額買取







