掛け軸の種類とは?選び方と買取のポイント
掛け軸は、長い歴史を持つ美術品で、その価値は作家やジャンルによって大きく異なります。近年では、特に有名作家や珍しい作品は高額で取引されることも。この記事では、掛け軸の買取相場を作家別やジャンル別に紹介します。あわせて高額買取を目指すためのポイントも解説しますので、おうちに眠っている掛け軸がある方は、ぜひ売却時の参考にしてくださいね。h2>掛け軸の買取相場は?作家・ジャンル別の相場を紹介
有名作家の買取相場は?
まずは、2025年3月時点での買取相場を元に、人気作家ごとの高額買取が期待できる作品を見てみましょう。
呉昌碩

呉昌碩は篆刻や書を得意とした中国の著名な芸術家です。彼の書は力強さと生命力を感じさせ、掛け軸としても非常に高い価値を持っています。
書:1,400万円
斎白石

斎白石は中国の近代絵画を代表する画家で、特に花鳥画や動物画で有名です。その精緻で細やかな描写は、掛け軸としても人気があります。特に「海老」の絵は高額で取引されています。
海老:1,000万円
円山応挙

円山応挙は、江戸時代の日本画の巨匠として知られ、その作品は日本画壇でも高く評価されています。彼の「雪柳狗子画」は、現在690万円程度で取引されており、円山応挙の描く繊細な風景や動物たちは今でも多くの人に愛されています。
雪柳狗子画:690万円
伊藤若沖

伊藤若沖は、江戸時代後期の画家で、特に動植物を題材にした作品で名を馳せました。「布袋」の作品は、彼のユニークな筆致が光るものとして、特に人気があります。
布袋:350万円
啓功

啓功は中国近代の書家として、その筆力と表現力に定評があります。書道作品としても非常に人気があり、高額買取が期待できます。
書:350万円
横山大観

横山大観は日本画の巨星で、近代日本画を代表する作家です。「雨」の作品は、彼の深い自然観と独自の表現力を感じさせるもので、掛け軸として高い価値があります。
雨:300万円
棟方志功

棟方志功は、戦後日本の版画家として注目された作家です。強いメッセージ性を持つ作品が高く評価されています。
文殊菩薩の柵:270万円
上村松園

上村松園は、女性を題材にした美しい日本画で有名な作家です。特に「窓外清香」という作品は、その優れた表現力から高値で取引されています。
窓外清香:200万円
富岡鉄斎

富岡鉄斎は、江戸時代後期から明治にかけて活躍した画家で、その水墨画や山水画で知られています。彼が製作した「水墨山水図」は特に有名です。
水墨山水図:130万円
福田平八郎

福田平八郎は20世紀の日本画家で、その技法と色使いに独自性があります。「白梅紋鶲」は名作として知られ、高値で取引されています。
白梅紋鶲:50万円
掛け軸のジャンル別の買取相場
掛け軸にはさまざまなジャンルがあり、それぞれ買取相場が異なります。
花鳥画
花や鳥を中心に、草木、虫、小動物、水辺の生き物など、自然界の生命を描いた絵が「花鳥画」と呼ばれるジャンルです。中国で確立された様式が日本にも伝わり、多くの作家によって描かれてきました。制作数が非常に多いため価格には幅がありますが、有名な作家による作品であれば数万円以上で取引されることも。特に人気の高い作家の作品には、20万円を超える値がつく例もあります。
山水画
「山水画」は、山や川、木々、岩などの自然をテーマにした風景画の一種です。ただし、実際の景色というよりは、理想的な自然美を描いたものが多く、日本では「幽玄」や「侘び寂び」の世界観と重なることから高く評価されています。作家物であれば2万円からが相場で、人気作家による山水画なら、20~30万円の値がつくものもあります。
神仏画
神様や仏様を描いた掛け軸は「神仏画」と呼ばれ、古くから信仰の対象として使われてきました。もともと文字が読めない人でも信仰の対象を視覚的に拝めるように、という目的で作られたものです。現在でも一定の需要があり、状態や作者によって価値は大きく異なります。一般的な作家ものでは2~5万円程度が目安ですが、棟方志功のような有名作家の作品であれば、100万円以上の値がつくものもあります。
水墨画
墨だけを使って描かれるのが「水墨画」です。墨の濃淡やにじみ、かすれを使って表現される独特の世界観が魅力で、日本でも長く親しまれています。水墨画の買取価格は、誰が描いたかによって大きく変わります。作家物であれば5万円程度が相場で、北大路魯山人のような有名作家のものだと数十万円の値がつくこともあります。
中国掛軸
中国の伝統的な絵画技法や書を用いて描かれた掛け軸は、「中国掛軸」として日本でも高い評価を受けています。特に、中国国内での美術品輸出が制限されるようになってからは、海外での需要が高まり、価格が上昇しています。作品の内容や状態、作家の知名度によって大きな差がありますが、5万円〜15万円前後が一つの目安となります。中には1,000万円以上の価格がつくような名品も存在します。
書画
書画とは、文字(書)と絵(画)が一体となった作品のことを指します。書の力強さや美しさ、また絵との調和が見どころであり、作家の個性が強く表れるジャンルです。書道家や画家として知られる人物の作品であれば、一定の価格がつくこともあります。
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高価買取されやすい掛け軸とは?

高価買取されやすい掛け軸の特徴
高価買取されやすい掛け軸の特徴としては以下があります。
希少性が高い
市場にあまり出回っていない掛け軸は、それだけで評価が高くなることがあります。例えば、作家本人の手による一点ものや、限定された展覧会のために描かれた作品などがこれに当たります。特に、同じ作家の作品でも、晩年の作風が大きく変化した時期のものや、制作年数が短かったころの作品などは、希少性の高さから高額になる可能性があります。
有名作家の作品
美術界で高く評価されている作家、またはテレビや雑誌などで紹介された経験のあるような有名作家の作品は、一般的に買取価格も高くなりやすいです。作家名を聞いてピンとくるような人物の作品であれば、それだけでコレクターや美術愛好家からの需要も高くなります。また、無名の作家でも、美術団体に所属していた経歴や展覧会での受賞歴があると評価されやすくなることもあります。
保存状態が良好
保存状態は査定額に大きく影響するので、シミやカビ・破れなどがあると、美術品としての価値が下がってしまうことがあります。掛け軸は紙や絹といったデリケートな素材で作られているため、湿気や直射日光に弱く、経年劣化が起こりやすいものです。きちんと箱に入れて保管していたり、年に数回しか広げていなかったり、状態の良い作品は、査定でも高評価を得やすくなります。
入手経路の信頼性が高い
掛け軸の価値を証明するためには、「いつ・どこで・誰から」入手したのかが分かっていることも重要です。信頼できる百貨店や美術商で購入した記録が残っていたり、共箱(作家の署名が入った箱)や鑑定書などが揃っていたりすると、査定担当者が作品の真贋や来歴を判断しやすくなります。逆に、入手経路が不明な場合は、本物であっても評価が下がってしまうこともあります。
高額買取が期待できる作家は?
富岡鉄斎
棟方志功は1903年青森県生まれの芸術家で、版画や絵画、掛軸など幅広い分野で活躍しました。特に掛軸作品は古美術市場でも高く評価されており、「祖師大言の柵」や「踊鯉図」などが有名です。「踊鯉図」には禅語とともに生き生きとした鯉が描かれ、棟方の個人的な思いも感じられる作品です。鯉への深い愛情が反映された作品は、美術ファンの間でも根強い人気があり、高額買取が期待できる作家のひとりといえるでしょう。
関連ページ:富岡鉄斎の買取についてはこちら
棟方志功
棟方志功は1903年生まれの日本を代表する芸術家で、絵画や版画、掛軸の分野で数多くの作品を残しました。若い頃は油絵で苦戦するも、徐々に評価を集め、1936年には「大和し美し」で名を広めます。1956年にはヴェネツィア・ビエンナーレで日本人初の国際版画大賞を受賞。代表的な掛軸作品には「踊鯉図」や「祖師大言の柵」などがあり、鯉への愛情や禅の思想が表現されています。今なお高額で取引される人気作家のひとりです。
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横山大観
横山大観は「近代日本画壇の巨匠」と称される日本画家で、独自の技法「朦朧体(もうろうたい)」を確立し、日本画の新たな表現を切り開きました。東京美術学校卒業後、京都で仏画研究や教育に携わりながら、日本美術院の創設にも貢献しました。彼の代表作には富士山をモチーフにした作品が多く、格調高いものほど高値で取引される傾向があります。なお、真作は横山大観記念館の登録番号で管理されており、贋作との判別にも役立ちます。
関連ページ:横山大観の買取についてはこちら
川合玉堂
川合玉堂は1873年生まれの日本画家で、円山四条派や狩野派の技法を学び、独自の画風を築きました。写生を重ねて日本各地の風景と人々の暮らしを描いた作品は、里山の情景を温かく表現し、多くの人に親しまれています。中でも掛軸は評価が高く、「潮の香」や「渓村彩雨」「春色駘蕩」などは構図や表現力が評価され、高額で取引されることもあります。自然と人の調和を描いた作品群は、今なお多くの支持を集めています。
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葛飾北斎
葛飾北斎は1760年に生まれ、6歳から絵に没頭し、19歳で浮世絵師・勝川春章に入門しました。33歳で独立した以降、琳派や読本の挿絵や絵本「北斎漫画」で人気を博し、表現力を磨きました。60代にはオランダ商館長から依頼され、70歳で「冨嶽三十六景」などの風景画や妖怪画を制作。90歳を超えても創作を続け、30,000点以上の作品を残しました。北斎の掛軸は高額買取が期待される貴重な作品として知られています。
竹久夢二
竹久夢二は大正浪漫を代表する芸術家で、美人画や本の挿絵、デザインなど幅広い作品を手がけました。彼の絵は、女性の優雅さと繊細さを描いたものが特徴で、特に「黒船屋」などの作品は彼のスタイルが色濃く表れています。彼の作品は掛軸にも多く、高額で取引されることがあります。その美しさと独自の世界観は今も多くのファンに愛されています。
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斎白石
斉白石は中国湖南省出身の画家で、27歳から本格的に絵を学び、花鳥画や鳥獣画を得意としました。北京に移住後、国際的な評価を高め、1922年の日中共同絵画展に出品し注目を浴びました。彼の作品は近代中国芸術に新しい風を吹き込み、特に海老や蛙などのモチーフが特徴です。斉白石の作品は高額で取引され、2011年には54億円で落札されるなど、近年では中国の富裕層による買い戻しが盛んです。大作や有名作品には一千万円以上の価値がつくこともあり、高額買取が期待できます。
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篠田桃紅
篠田桃紅は1913年に生まれ、父の影響で幼少期から書を学び、独学で技術を磨いた書家です。昭和15年に個展を開き、戦後は墨を用いた抽象画に転向。欧米各地で個展を開催し、東京芝増上寺の襖絵や京都国際会館の壁画などの大作でも名を馳せました。リトグラフ制作や著書「墨いろ」も手掛け、幅広い活動を行っています。彼女の作品は、掛軸としても人気が高く、高額買取が期待されます。
呉昌碩
呉昌碩は清王朝末期の文人で、書、画、篆刻に精通し、「四絶」と称される優れた芸術家です。特に篆刻の評価が高く、書では周代の石鼓文に基づく新様式を確立しました。梅や牡丹などの花卉画も得意とし、力強い線が特徴的です。昌碩の掛軸は人気があり、「尺牘」や「臨石鼓文」などはその迫力と重厚感が評価されています。また、「梅花図」や「牡丹水仙図」など、繊細な花の表現も支持されています。彼の作品は力強さと生命力に溢れ、高額買取が期待できる価値があります。
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菱田春草
菱田春草は、斬新な技法で美しい幽玄を表現した日本画家で、代表作「落葉」「黒き猫」などが高く評価されています。1874年に長野県で生まれ、東京美術学校で横山大観と共に学びました。無線描法を試みるなど、独自の日本画を追求しましたが、当時は「朦朧体」として批判されたこともあります。しかし現在では彼の革新的な技法と世界観は日本画の未来を変えたと言われており、掛け軸は高値で取引されています。
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掛け軸を高額買取してもうらうためのポイント

ご自宅に眠っている掛け軸を売るとき、少しの工夫で買取額が大きく変わることがあります。状態の良し悪しだけでなく、誰が描いたのか、どんな経緯で手元にあるのかなど、さまざまな要素が評価に影響を与えるからです。
付属品を揃える
掛け軸を売るときは、作品本体だけでなく、一緒についていたものも揃えておくことがとても大切です。例えば、掛け軸が収められていた木箱(特に作家の署名がある「共箱」)や、作品に関する説明書き、鑑定書などがそれにあたります。こういった付属品があることで、作品の来歴や作者が明確になり、査定額がアップする可能性があります。特に近代以降の作家の作品では、箱がないことで大きく減額されてしまうケースもあるため、付属品は大切に保管しておきましょう。
入手経路を確認する
「その掛け軸がどこから来たのか」「いつ誰から譲り受けたのか」といった情報も、査定において重要な手がかりになります。信頼できる美術商や百貨店などから購入したものであれば、真作である可能性が高いと判断されることもあります。また、もし家族や親戚から譲り受けたものであっても、その背景を知っている人がいれば話を聞いておくと良いでしょう。作品の出所がはっきりしていることは、価値を証明するうえでとても有利になります。
お手入れのしすぎに注意する
汚れや傷みがあると「少しでも綺麗にしてから売ろう」と考える方もいらっしゃいますが、実はこれが落とし穴になることも。掛け軸は非常にデリケートなものなので、専門知識がない状態で無理にクリーニングをすると、かえって傷みがひどくなってしまう場合があります。シミや色あせ、破れなどがある場合も、そのままの状態で査定を受けた方が、結果的に良い価格がつくことも少なくありません。どうしても気になる場合は、自分で手を加える前に、まず専門店に相談してみましょう。掛け軸のお手入れや正しい保管方法についてはこちらの記事を参考にしてください。
関連記事:掛軸の正しい保管方法・手入れ方法とは?
まとめて売却する
もし掛け軸が複数ある場合は、一点ずつ売るよりもまとめて査定に出すことで、総合的に高く評価されることがあります。業者側の手間や人件費が減る分、その分を査定額に反映してくれることがあるためです。同様に、他の骨董品や美術品がある場合は、それらと一緒に査定してもらうのもおすすめです。
適切な買取業者で鑑定してもらう
掛け軸の価値をきちんと見極めてもらうには、やはり経験豊富な専門家の目が欠かせません。掛け軸や日本美術に精通した店舗や、これまでに多くの実績がある業者を選ぶことで、より適正な価格での買取が期待できます。「どこに頼んだらいいかわからない」と迷ったときは、複数の業者に見積もりを取って比べてみると良いでしょう。
掛け軸の買取業者を選ぶときのポイントは?

掛け軸はジャンルも幅広く、価値の見極めが難しいため、業者選びが非常に重要です。安心して掛け軸を預けられる買取業者を選ぶためのポイントを知っておきましょう。
掛け軸の買取実績が豊富である
まず確認したいのが、その業者に掛け軸の買取実績がどれほどあるかという点です。長く営業を続けており、過去にさまざまな作品を扱ってきた業者であれば、掛け軸に関する知識や目利き力があると考えられます。
特に専門性の高い掛け軸は、知識が浅い業者では正しく査定できないこともあるため、これまでにどのようなジャンルや作家の作品を取り扱ってきたのか、事前に調べておくと安心です。また、実績のある業者は販売ルートも確立していることが多く、結果として高額査定につながることもあります。
掛け軸に詳しい鑑定士が所属している
掛け軸の価値は、作品のジャンルや時代、作家によって大きく異なります。そのため、一般の方がそれを見分けるのは難しいのが実情です。掛け軸を適切に評価するためには、それに詳しい鑑定士が必要不可欠です。業者のホームページなどで、在籍するスタッフのプロフィールや資格、これまでの査定事例などが紹介されているかを確認しておくと良いでしょう。
メディア露出があり母体がしっかりしている会社
「どんな会社が運営しているか」も、業者選びでは見逃せないポイントです。テレビや雑誌などのメディアに取り上げられている業者は、それなりの実績や信頼性を持っているケースが多く、安心感があります。また、高価な掛け軸を買い取るには資金的な余裕も必要です。その点でも、資本力のある企業や長年安定して営業している会社を選ぶと良いでしょう。
取引環境を確認する
査定や売却のやり取りは、意外と細かい確認や手続きが必要になります。個人情報の取り扱いや支払い方法、保証内容などが明確に提示されているか、取引の流れがわかりやすく説明されているかも確認しておきましょう。見落としがちな部分ですが、こうした点がしっかりしている業者は、顧客への配慮が行き届いている証でもあります。
Q&Aやアフターフォローがしっかりしている
万が一「やっぱり売るのをやめたい」と思ったときに対応してくれるクーリングオフ制度が整っているかなど、アフターフォローも確認しておきたいポイントです。
担当者が丁寧に対応してくれる
初めて掛け軸を売る方にとって、不安はつきものです。そんなとき、質問にしっかり答えてくれる担当者がいると安心です。問い合わせや査定依頼をした際に、丁寧な言葉づかいや親身な対応が感じられるかどうかも、重要な判断材料になります。
掛け軸高額買取
まとめ
今回ご紹介したように、掛け軸の買取相場は、作家の知名度や作品のジャンルによって大きく変動します。また、作品の保存状態が良好であることや、入手経路が信頼できることも大きなポイントとなります。もし、家に眠っている掛け軸があるなら、まずはその価値を知ることが第一歩です。まずは査定を出してみて、どのくらいの価値があるのか確認してみてはいかがでしょうか?
掛け軸高額買取






